皆さんこんにちは。ライターの福田です。
今回もお悩み共有会をお読みいただき、ありがとうございます。引き続き「これどうしよう?とすごく悩んだ」「どうすればいいのかさっぱり分からなかった…」という経験をご紹介していきます。
今回はNPO法人Learning for All(以下、LFA)のスタッフに、学習支援拠点で子どもに勉強を促そうとして困った事例をお伺いしました。学習支援拠点には、学習遅滞のために自信を失って勉強をしたくない、勉強してもどうせできるようにならないと考える子どももいると思います。そのような子どもにどう接するのが良いのか、悩んだ事例です。
お悩み共有者紹介
今回、お悩み体験をお話ししてくれるのは、LFAの学習支援スタッフをしているNさんです。教師経験の中で印象に残っている出来事をお話しいただきました。
印象に残っている悩み
ーどんな悩みが印象に残っていますか。
勉強を教えている子どもに、なかなか勉強に取り組んでもらえなくて悩んだことがあります。その子は中学校2年生の女の子で、休み時間は好きなカードゲームやアニメ、YouTubeの話をずっと話し続ける面白い子でした。
とはいえ学習遅滞は大きく、漢字や小学校の計算もできていない状態だったので、私たちとしては算数・数学や漢字は日常で困らない程度まではできるようにしたいなと考えていました。
ある日、学習支援拠点に来たその子に「漢字を勉強しようか」と声をかけたのですが、その子は着ているパーカーのフードをかぶり、やがては丸まって大人の言うことを完全にシャットアウトしていました。
それから、学習支援拠点に来るのが嫌になったのか、少しずつ来る頻度が少なくなっていきました。その間も私たちは、「どうすれば抵抗感を感じずに勉強に結び付けられるか」を考え、拠点に来た時には勉強をするように促し続けていましたが、彼女は同じような反応が続きました。そして、最後には拠点に来なくなってしまいました。
悩みの要因
ーそこにはどんな原因があると思いますか。
彼女はそれだけ勉強したくなかったのだと思います。その背景には、小学校の時から周りと比べて勉強できなかったという経験がありました。勉強でミスをして自分はできない人間だと感じる経験をしたくないと思うのは当然だと思います。
そして、そのような子どもに寄り添うことができなかったのがよくなかったと思います。受験が迫っていることもあり、私自身焦りがありました。本人に高校に行きたいという気持ちがあることも知っていたため、このままではどこの高校も行けないのでは、と焦っていたのです。勉強をして、なんとか高校に進学して欲しいという気持ちが強かったです。
同じ場面に戻れるならばどうするか
ー同じ場面に戻れるならばどうしますか。
本人の「ゆっくりしたい、居場所がほしい」という気持ちに寄り添って過ごし、本人から勉強したいという気持ちが出てくるのを待ってみるべきだったと思います。
実は、その子は中学校3年生になってから再び拠点に来てくれるようになりました。その時にもやはり勉強はしたくなかったようだったので、前回の反省を踏まえ、私たちも勉強を促すことはしませんでした。
本人のニーズは勉強することではなく、一緒にゆっくり過ごすことだったと思います。一緒にサッカーをしたり、アニメを見たりして過ごしました。
拠点に来なくなり始めた期間にそのような対応ができればよかったと、今では思います。
さらには、ただ遊ぶだけではなく、植物を観察したり、街に出てみたり、本人の関心が広がって勉強に興味を持つきっかけとなるような体験を提供できたら良かったのだろうなと思っています。
悩んだ経験から学んだこと
ーこの経験からどのようなことを学びましたか。
大事なのは、大人が焦らないことだと思います。その子は進路未決定のまま中学を卒業しましたが、子どものペースがあるので、いくら大人が焦っても子どもが変わらないこともあると思います。支援をする大人が焦ることは、子どもにとっても大人にとってもよくないと感じました。
子ども支援に関わる皆さんへメッセージ
ーこの記事をご覧になっている方にどんなことを伝えたいですか。
①「どうにでもなる」という余裕を持つ
「中学卒業後に高校に進学する」という、いわゆる一般的なルートで高校に行こうとしなくてもいいのではないかと今では思っています。今でも不登校の子どもや勉強をしたがらない子ども、特に受験学年でない子どもに勉強のモチベーションを持ってもらうのはとても難しく感じます。そうした子どもの気持ちに寄り添いつつ、勉強に興味を持つきっかけを与えられるよう、バランスを取りながら接することは簡単ではありません。
②余裕を持つためにも、選択肢のための情報をたくさん調べておく
「焦らないように」とは言いましたが、何も知らない状態では子供が勉強をしようとしない時に焦ってしまうと思います。そのような時に大人が焦らないためにも、多様な選択肢を知っておくべきだと考えます。例えば、通信制高校や就労支援団体もたくさんあります。
たくさんある選択肢をあらかじめ調べておいて多様な選択肢を知ることで、まず大人が焦らないようにすることが大事です。
中学卒業後の進学先の選択肢については、こちらの記事もご参考ください。
今回は、子どもに勉強を強いた結果、支援拠点に来なくなってしまった経験を紹介してもらいました。勉強をしたくない気持ちにも寄り添いつつ、その子の将来も考えるというバランスは難しいですね…。
Nさん、ありがとうございました!
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
この記事は役に立ちましたか?
記事をシェアしてみんなで学ぼう