中学生の多様な進学先!進路に悩む不登校の子ども向け

子ども支援の現場では、卒業後の進路について相談に乗ることもありますよね。特に不登校などの困難を抱えている子どもは、自分に合う進路があるのか悩んでいることも多いのではないでしょうか。

今回は、中学卒業後の進路選択で参考になる、多様な進学先をご紹介します。

全日制の高校だけではない!多様な進学の選択肢

多くの方は、中学校卒業後の進路先候補としてまず「高等学校」、いわゆる高校を思い浮かべられると思います。しかし、高校にも様々な種類があり、また高校以外の選択肢も多様にあります。

この記事では、以下のような選択肢をご紹介していきます。

  • 高等学校(高校)
    • 卒業できる条件の違い:学年制、単位制
    • 学び方の違い:全日制、定時制、通信制
    • 学ぶ内容の違い:普通科、専門学科、総合学科
    • 不登校特例校(所在地:鹿児島県、東京都、神奈川県)
    • (参考)教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールの活用
    • (参考)東京都・神奈川県の特色ある高校
  • 専修学校:高等専修学校(高等課程)、一般過程
  • 高等専門学校(高専)

 

進学先のそれぞれの特徴

それぞれの選択肢の特徴を、少し詳しく見てみましょう。

高等学校(高校)

いわゆる「高校」。文部科学省が決めている学習指導要領に基づいて授業内容などが組まれ、決められた単位を取得すると卒業することができます。

卒業できる条件の違い

  • 学年制:学年の区分があり、各学年で修得すべき科目などが決められているため、それを修得できなかった場合は、留年となり、次の学年に進級することができません。
  • 単位制:学年の区分がなく、各学年で修得すべき科目などに決まりはなく、卒業に必要だと決められた単位を取得し、3年以上在籍すると卒業できます。

学び方の違い

  • 全日制:学校での授業が中心で、平日の朝に登校し、夕方に帰る高校です。学年制が主流なので留年もありえますが、単位制の学校も増えてきています。(令和2年度:655校)卒業までにかかる時間(修業年限)は、3年間です。(引用:「高等学校教育の現状について」文部科学省)
  • 定時制:学校の授業が中心で、夜間などの特別な時間または時期に授業を行う高校です。平日の夕方に登校し夜に帰る学校もありますし、午前や午後に授業を行う学校もあります。卒業までにかかる時間(修業年限)は、原則4年間ですが、3年間の学校もあります。
  • 通信制:自宅等での学習が中心で、添削指導(レポート)、面接指導(スクーリング)、試験等を通じて学習します。面接指導、つまり登校する必要がある日数は、年間数日の学校もあれば、ほぼ毎日の学校もあり、学校によって差があります。また、通信制高校は必ずしも全ての生徒が通える範囲に本校校舎があるわけではないため、面接指導や試験のためにサテライト施設といって、以下のように他の施設を活用している場合もあります。卒業までにかかる時間(修業年限)は、3年以上です。

    【通信制高校に関連する他施設】
    • 協力校:通信制高校の面接指導や試験に校舎を貸している高校。
    • 技能連携教育施設(技能連携校):都道府県の教育委員会が指定した施設で、この施設で技能教育を受けた場合、連携している通信制高校・定時制高校の単位として認められます。連携している高校と、技能連携校の両方に通い、卒業した場合は、高校の卒業資格を得ることができます。高等専修学校が中心です。
    • サポート施設(サポート校):上記以外で、生徒に対して学習・生活面の支援を提供する施設。NPO・学習塾・予備校など、様々な主体が運営しています。この施設だけに通っても、高校卒業資格は取得できません。

学ぶ内容の違い

  • 普通科:普通科目(「国語」「地理歴史」「数学」「理科」「外国語」など)を中心に学習します。令和2年度の卒業後の進路状況は、65.3%が大学等へ進学、21.0%が専修学校へ進学、8.5%が就職となっています。(引用:「高等学校教育の現状について」文部科学省)
  • 専門学科:各分野の専門家になるために必要な知識・技術を身につけるため、専門科目を中心に学習します。「農業」、「工業」、「商業」などがあります。令和2年度の卒業後の進路状況は、28.3%が大学等へ進学、21.9%が専修学校へ進学、46.9%が就職となっています。(引用:「高等学校教育の現状について」文部科学省)
  • 総合学科:必ず履修しなければならない科目もありますが、普通科目・専門科目から比較的自由に自分が習いたい科目を選択し、自分の時間割をつくることが可能です。原則として単位制です。令和2年度の卒業後の進路状況は、34.9%が大学等へ進学、32.0%が専修学校へ進学、28.7%が就職となっています。(引用:「高等学校教育の現状について」文部科学省)

不登校特例校

文部科学省が決めている学習指導要領にとらわれず、不登校の生徒に寄り添った教育やきめ細かな指導などを提供する学校。高校については、令和3年度時点で、以下の3校が指定されています。

  • 鹿児島城西高等学校 普通科(ドリームコース)(所在地:鹿児島県日置市)
  • NHK学園高等学校(所在地:東京都国立市)
  • 星槎高等学校(所在地:神奈川県横浜市)

参考:「指定の状況及び指定を受けている設置者一覧」文部科学省

(参考)教育支援センター(適応指導教室)やフリースクールの活用

高校に通うことが難しい場合は、以下の活用も検討してみてください。

  • 教育支援センター(適応指導教室):高校に通いたいが通うことが難しい生徒に対して学習・心理面などの支援を行う施設です。各教育委員会が運営しています。
  • フリースクール:民間の団体が運営しています。

教育支援センターやフリースクールのみで高校卒業資格を取得することはできませんが、高校に在籍している場合は、これらの施設に通っている日数が校長の判断によって高校の出席扱いになることもあります。対象の子どもは各施設により異なり、例えば、同じ自治体の教育長が所管する高校に在籍している子どもや、高校を中途退学した子どもが対象となっています。(参考:「大阪府高等学校教育支援センター」大阪府、「岐阜県教育支援センターG-プレイス」岐阜県)

なお、高校生を対象としていない施設もありますので、受入対象の子どもは各施設に確認してください。

(参考)東京都・神奈川県の特色ある高校

東京都や神奈川県では、不登校経験を持つ生徒が入りやすい特色ある高校を設置・運営しています。お住まいの地域でも同様の取組を実施している可能性がありますので、是非検索してみてください。

  • 東京都(学校名は「都立高校等検索」(東京都)で検索できます)
    • チャレンジスクール(定時制・総合学科)(5校):「小・中学校時代に不登校経験を持つ生徒や長期欠席等が原因で高校を中途退学した者等を主に受け入れる総合学科・三部制(午前部・午後部・夜間部)の高校で、他部履修により3年での卒業も可能とする」(「これまで設置してきた多様なタイプの学校」(東京都)より抜粋)。
    • エンカレッジスクール(6校):「小・中学校で十分能力を発揮できなかった生徒のやる気を育て、頑張りを励まし、応援する学校として、社会生活を送る上で必要な基礎的・基本的学力を身に付けることを目的として、既設校の中から指定。基礎・基本を徹底するとともに体験学習を重視」(「これまで設置してきた多様なタイプの学校」(東京都)より抜粋)。
  • 神奈川県(学校名は「新しい学びのかたちから高校をさがす」(神奈川県)で検索できます)
    • クリエイティブスクール(全日制普通科(学年制))(2校):「一人ひとりが持っている力を必ずしも十分に発揮できなかった生徒に対して、これまで以上に学習意欲を高める取組みを行う学校です。」(「新しい学びのかたちから高校をさがす」(神奈川県)より抜粋)
    • フレキシブルスクール(普通科(単位制))(2校):「一人ひとりの生活スタイルや学習のニーズに合わせて、時間帯を選んで学べる学校です。」(「新しい学びのかたちから高校をさがす」(神奈川県)より抜粋)

 

専修学校:高等専修学校(高等課程)・一般課程

実践的な授業や専門的な技術教育を通じて、仕事や生活に必要となる専門的な知識・技術を修得するための学校です。学ぶことができる専門分野は、「工業」「農業」「医療」「衛生」「教育・社会福祉」「商業実務」「服飾・家政」「文化・教養」の8つです。入学資格によって3つの異なる課程に分かれています。中学校卒業が入学資格である「高等専修学校(高等課程)」、高校卒業か3年制の高等専修学校卒業が入学資格である「専門学校(専門課程)」、そして特に入学資格のない「一般課程」です。この記事では、中学校卒業段階で行くことできる「高等専修学校(高等課程)」「一般過程」について説明します。

高等専修学校(高等課程)

文部科学省の決めた学習指導要領に縛られないため、専門分野や取得する資格によって、授業内容などは大きく異なりますが、企業を含めた外部の機関と連携した実習や、資格取得に向けた支援などを行っています。
また、不登校を経験した生徒の自立を支えることに力を注いでいる学校もあり、少人数教育の実施や生活・学習のサポートなどを行っています。
卒業までにかかる時間は主に1年~3年まで様々ですが、卒業後に大学等の高等教育機関に進学したい場合は、以下2つのどちらかの方法を活用する必要があります。

  • 大学入学資格付与指定校:高等専修学校のうち、①卒業までに必要な年数が3年以上で、②卒業に必要な総授業時数が2590時間以上である、などの条件を満たし、文部科学大臣に指定された学校。この学校を卒業すると、高校の卒業生と同様に、大学等に進学することが可能です。
  • 技能連携教育施設(技能連携校)(再掲):「高等学校(高校)」の「通信制」の項目をご参照ください。

一般課程

卒業までにかかる時間は1年のものが多いです。全国専修学校一般課程各種学校協会のHPによると、予備校、日本語学校、自動車学校、珠算学校などが身近な例として挙げられます。なお、この学校を卒業しただけでは、大学等の高等教育機関に進学することはできません。

 

高等専門学校(高専)

5年間(一部5年半)の一貫教育により、専門的な内容を理論から学んだ上で、実験・実習を通じて理解を深めることができる学校です。卒業研究や、地域産業界・地方公共団体等と連携したインターンシップを通じて、創造性や問題解決能力を育てることにも力を注いでいます。学科は、大きく「工業系」と「商船系」があり、その他にも、「経営情報学科」、「情報デザイン学科」、「コミュニケーション情報学科」、「国際流通学科」などもあります。詳細の学科は、文部科学省HPから見ることができます。

卒業後は、大学への編入資格を得ることができます。また、多くの高専が2年間の専門教育を受けることができる専攻科を設けているため、卒業後はそこに進学することも可能です。なお、専攻科を修了した場合は、大学院への入学資格も得られます。

参考:文部科学省「令和2年度高等専門学校一覧

 

進学先の比較表

ご紹介した進学先について、重要だと思われる項目を以下に比較表としてまとめました。

  高校
全日 定時 通信
学校数 
(R2年度)
4,234校
(その他、全日・定時併置 468校)
172校 257校
(うち、140校は全日や定時と併置)
生徒数
(R2年度)
3,012,708人 793,56人 206,948人
入学資格 中学校卒業者 中学校卒業者 中学校卒業者
卒業までにかかる年数
(修業年限)
3年 3年以上 3年以上
登校日数・通学時間帯 平日は毎日・主に朝登校して夕方帰宅 平日は毎日・夜間が中心だが、午前・午後・夜間など学校によって異なる 年間数日~平日は毎日など、学校によって異なる
就学支援対象
卒業後に大学等へ
進学可能か
卒業後の状況
①大学等進学
②専修学校(専門課程)進学
③就職
(R2年度)
①56.5%
②16.9%
③17%
(R2年度)
①13.3%
②16.7%
③41.1%
(R1年度間)
①17.6%
②23.3%
③18.9%

 

  専修学校 高等専門学校
(高専)
高等専修学校
(高等課程)
一般課程
学校数 
(R2年度)
404校 143校 57校
生徒数
(R2年度)
34,075人 22,684人 56,974人
入学資格 中学校卒業者 特になし 中学校卒業者
卒業までにかかる年数
(修業年限)
1年以上
(大学入学資格付与指定校の場合は3年以上)
1年以上 5年
登校日数・通学時間帯 学校により異なる 学校により異なる 平日は毎日・主に朝登校して夕方帰宅
就学支援対象
(高等学校入学資格者を入所資格とする国家資格者の養成施設のみ)

(第1~3学年まで)
卒業後に大学等へ
進学可能か

(大学入学資格付与指定校もしくは技能連携校のみ可能)
×
卒業後の状況
①大学等進学
②専修学校(専門課程)進学
③就職
(H27年度)
①5.4%
②26.2%
③55.9%
(H27年度)
①83.5%
②1.6%
③2.9%
(R2.3時点)
進学 37.8%
専修学校・外国の
学校等入学 0.7%
就職 59.3%

出典:「令和2年度学校基本調査」文部科学省、「高等専修学校オンラインセミナー」文部科学省、「高等学校入学資格について」文部科学省、「入学するには…」文部科学省、「未来をひらく高等専修学校」文部科学省、「これからの専修学校教育の振興のあり方検討会議(第9回)参考資料1 参考資料集」文部科学省

 

まとめ:子どもの進路決定は、子どもの気持ちに寄添って

中学生の子どもの進学先について大まかにご紹介しました。ポイントを下記にまとめます。

  • 進学先は、全日制の高校以外にも多様な選択肢がある
  • 高校でも、卒業できる条件の違い/学び方の違い/学ぶ内容の違いによって様々な種類がある
  • また、高校には、不登校の子どもに寄り添った教育を提供する不登校特例校や、都道府県によって設置・運営されている特色ある高校もある
  • 高校に通えるか不安がある場合は、高校への進学と併せて学習・心理面などの支援を行う施設である、教育支援センター(適応指導教室)や、フリースクールの活用も選択肢の一つ
  • 高校以外でも、仕事や生活に必要となる専門的な知識・技術を修得できる専修学校や、5年間(一部5年半)の一貫教育により特定分野の理解を深める高等専門学校(高専)に進むという選択肢もある

子ども自身が「どんなことに興味があるのか」「今後どのようにしたいのか」、時間をかけて話し合う時間を大切にしましょう。

また、お住まいの地域によってどのような進学先があるのか異なりますので、まずはご希望の地域の進学先を調べてみることをおすすめします。例えば、不登校の子ども向けの進学先について相談・情報収集したい場合は、「不登校 高校 相談 ●●県」といったキーワードで検索してみてください。多くの都道府県は、不登校の子どもの保護者の方が相談できる窓口を設けています。各市町村にも窓口はありますが、高校は都道府県の担当ですので、まず都道府県に相談してもよいと思います。

大人も焦らずに子どもの心に寄添い、元気に楽しく日々を過ごせるようサポートしていきたいですね。

 

(参考)参照したHP

高等学校(高校)

専修学校:高等専修学校(高等課程)・一般課程

高等専門学校(高専)

その他

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