学習支援や居場所づくりなどの子ども支援の現場では、ボランティアの皆さんの活躍が不可欠です。一方、「募集してもなかなか必要な人数が集まらない」「そもそもどんなボランティアに来てもらうのが良いのだろう」「活動を開始してもすぐに来なくなってしまうボランティアが多い」など、人員に関する悩みは尽きないかと思います。
この記事では、ボランティアにやりがいをもって力を発揮してもらい、長期的に活動に参加してもらうための「ボランティアマネジメント」のポイントについてご紹介します。
※本記事は以下の動画記事に基づいて作成をしております。動画でご覧になりたい方は、以下の記事もご活用ください。
ボランティアマネジメントとは
ボランティアにやりがいをもって力を発揮してもらい、長期間にわたって活動に参加してもらうための方法を「ボランティアマネジメント」としてご紹介します。ボランティアマネジメントをうまく実施することで、安定的な拠点の運営につながったり、結果として採用コストを抑えることができます。
「募集・採用」「研修オリエンテーション」「コミュニケーション」の3つについてご説明します。初めからすべてを実施することは難しいですが、できるところから是非取り入れてみてください。
募集・採用
募集・採用時に、しっかりとニーズとギャップの確認をしておきましょう。
つまり、団体側のやってほしいこと・やってほしくないことと、応募者側のやりたいこと・やりたくないこと・出来ないことの、一致している点/一致していない点を明確にしておくことが重要です。
具体的には、運営側としては以下のことを明確に伝える必要があります。
- 何を目的に拠点を実施していて、どのような子どもたちが通っているのか
- どのような姿勢で臨んでほしいのか、子どもたちに接してほしいのか
- 週何日、何時間程度時間を割いてもらう必要があり、ボランティアの役割は何なのか
- 経費処理方法などの必要伝達事項 など
一方で応募者については、以下のことを面談や応募書類で把握できると良いでしょう。
- 何故ボランティアに興味を持ったのか
- この活動で何を達成したいのか
- どれくらい活動に時間をかけられるのか
- 過去にボランティアや指導の経験はあるか など
事前にこれらをお互いに明確にすることで、活動し始めてから「こんなはずじゃなかった」という状況を防ぎ、結果的に採用コストを抑えることができます。
画像:認定NPO法人Learning for All (以下、LFA)作成
また、支援拠点の目的達成のために、あると良い能力やスキルを明確化し、ボランティアの誰が、どのような能力・スキルを持っているのかを把握しておくことも有効です。目的はボランティアを評価することではなく「この子はこういうことが得意なようだから、こういう子どもを任せられるかも」と、ボランティアと子ども、ボランティアと役割のマッチングを判断する基準にすることです。ボランティア自身も活動しやすい環境を作り出すことができるでしょう。
研修・オリエンテーション
採用してそのまますぐに活動に参加してもらうのではなく、事前に最低限必要なルール・姿勢・知識などの説明を実施すると良いでしょう。子どもと接することが初めてというボランティアもいるため、なるべく戸惑わずに活動に参加してもらうための準備をしましょう。
研修・オリエンテーションの内容の例としては、拠点の目的目標、子どもの抱える課題や拠点ルールなどの「基礎事項」や、ボランティア一人ひとりにどんな役割を担ってもらいたいのか、どのような姿勢で活動に臨み、子どもたちと接してほしいのか等「ボランティアに期待すること」を伝えることも大切です。
画像:LF作成
スタッフ・ボランティアがお互いの参加動機や目的を共有する場を設けることは、お互いへの理解や尊重を生み出し、今後のチームワーク形成のためにも非常に有効です。更に、子どもとのコミュニケーション方法や勉強の指導方法など、身に付けてもらいたいスキルについての研修も設けられると良いでしょう。初めは自分たちで研修を準備することは難しいと思いますので、課題図書を設けたり、研修提供を行っている他団体の研修を活用するなどの方法もあります。
活動を開始してからは、ボランティアから「子どもと関わるうえで困っていること」「知りたいこと」をよく聞くようにし、後々の研修やオリエンテーションに反映していくと良いでしょう。
画像:LF作成
コミュニケーション
ボランティア自身の「成功体験」をサポート
無償で活動してくれているボランティアにとって、活動の場が「自分のやりたいことができる場所」「自分が活躍できる場所」だと感じられることは、大きなモチベーションにつながります。運営側としては、ボランティアがそう感じられるよう、彼ら自身の成功体験をサポートしていくことが大切です。
そのためには、相談しやすい雰囲気・関係性づくりが重要です。どうしても忙しそうなスタッフには、ボランティアから声をかけづらく、結果として一人で悩みや問題を抱え込みがちです。雑談を含め、スタッフからこまめに声がけをしていくことを心掛けましょう。
振り返り・共有の時間を設ける
活動後に振り返りや共有の時間を設けるのも良いでしょう。今日の子どもたちの様子や感じたことを振り返ったり、今日の良かったことや困ったことを共有し、解決策を話し合ってみるのも良いでしょう、その時は、こちらの期待ばかりを押し付けるのではなく、ボランティアの考え方ややりたいことも尊重して話し合いを行っていきましょう。
役割や子どもとのマッチングを考える
どんな人にも得意なことや苦手なことがあります。子どもとの関係がなかなか上手くいかなかったり、どうしても今の役割が難しそうな場合は、本人と話し合いながら担当の子どもや役割を変更していくことも必要です。この時も、運営側で一方的に決めるのではなく、本人の希望なども聞き、話し合いながら進めるようにしましょう。
画像:LF作成
スケジュール・体調管理のサポート
ボランティアによっては、寝る間を惜しんで活動してしまったり、頑張るあまりに体調を崩してしまう人もいます。運営側として、ボランティアに健康的に活動してもらうために、スケジュール管理や体調管理等のサポートを行っていけると良いでしょう。
感謝・称賛を伝える文化
活動していると当たり前に思いがちですが、無償で多くの時間を割いてくれているボランティアに対して、日ごろから感謝・称賛を伝えるようにしていきましょう。ボランティアの日ごろの活動をよく観察し、事実に基づいた感謝・称賛を伝えることが大切です。例えば振り返り時間にスタッフ・ボランティア同士で、お互いの良かったところを紙に書いて渡すなど、全員を巻き込んで感謝・称賛を伝える文化を作り上げていけると良いでしょう。
まとめ
今回は、ボランティアに意欲的・長期的に参加してもらうための、ボランティアマネジメントの方法を紹介しました。ポイントを以下にまとめます。
- 募集・採用時に、団体と応募者側とでニーズとギャップをしっかり確認することで、採用後のミスマッチを防ぐことができる。
- ボランティアの活動を始める前に研修やオリエンテーションを行い、ボランティアがなるべく戸惑わずに活動に参加できるようにすることが重要である。
- ボランティアにとって活動の場が「自分のやりたいことができる場所」「自分が活躍できる場所」となれるよう、彼らの成功体験をサポートすることが大切である。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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