子どもや若者が安心して過ごせる「居場所づくり」は、近年、全国各地でさまざまな形で広がりを見せています。しかし、性的少数者(セクシュアルマイノリティ )が気兼ねなく立ち寄れる場は、まだ多くの地域で十分あるとはいえません。特に地方では、性のあり方や性自認についての悩みを持つ人と出会える機会が少なく、「誰にも相談できない」「自分のままでいられる場所がない」と感じながら日常を過ごしている人も少なくありません。
今回は、群馬県前橋市でLGBTQなどの性的少数者の居場所づくりに取り組む一般社団法人ハレルワの代表理事・間々田久渚(ままだひさな)さん、理事の田畑葉子(たばたようこ)さん、須田きくみ(すだきくみ)さんにお話を伺いました。
前編では、コミュニティスペース「まちのほけんしつ」がどのような思いから生まれたのか、ハレルワの活動の成り立ちと、地域に居場所をつくる取り組みについてご紹介します。
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プロフィール:間々田 久渚(ままだ ひさな)氏
一般社団法人ハレルワ 代表理事。1991年、群馬県太田市生まれ。群馬大学教育学部美術専攻卒業。大学で教育と美術を学び、卒業後は民間企業に勤務する傍ら、2016年よりハレルワ(当時は任意団体)の代表として活動を開始。トランスジェンダー男性であることを公表し、LGBTQの居場所づくりや学校・企業での講演活動を行う。2021年、前橋市の商店街にコミュニティスペース「まちのほけんしつ」を開設。

プロフィール:田畑 葉子(たばた ようこ)氏
一般社団法人ハレルワ 理事。1968年、大阪府生まれ。神戸大学工学部建築学専攻卒業。建設会社や自動車メーカーなどで長年勤務した後、2025年の退職を機にハレルワの活動に参加。レズビアンであることを公表し、LGBTQの居場所づくりや学校・企業での講演活動に取り組む。現在は埼玉県在住。研修講師として働く傍らハレルワ理事として活動している。

プロフィール:須田 きくみ(すだ きくみ)氏
一般社団法人ハレルワ 理事。1970年、群馬県高崎市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。18歳で上京して以来、LGBTQコミュニティに関わり続け、性的少数者当事者として活動。出版編集や国際業務を経て、通訳・翻訳の専門職として企業に勤務。2021年より プライドハウス東京に参画し、2025年からはハレルワ理事として教育機関や企業で講演や研修を行っている。
「まちのほけんしつ」という名前に込めた思い

提供:一般社団法人ハレルワ

出典:一般社団法人ハレルワ
—まず、「まちのほけんしつ」について伺えればと思います。どのような場所で、どんな思いから立ち上げられたのでしょうか。
間々田さん)ハレルワとしては、LGBTQかどうかということに強くこだわっているわけではないのです。この場所を必要としている人が来てくれればいい、という思いで開いています。
ハレルワ立ち上げ当時、群馬では、LGBTQの当事者が気軽に立ち寄れる場所がほとんどありませんでした。日曜日に月1回の交流会を始めたのですが、「日曜日は仕事で参加できない」「活動日以外にも行ける場所がほしい」という声が少しずつ届くようになってきました。
群馬は車社会なので、遠くまで移動するのも簡単ではありません。だったら、困ったときにふらっと立ち寄れる場所が地域にあったほうがいいよね、という話になりました。それが「まちのほけんしつ」をつくろうと思ったきっかけです。
—「交流会だけでは足りない」という声があったんですね。
間々田さん)はい。月1回では間が空いてしまいますし、もっと気軽に来られる場所が必要だと感じていました。
学校の保健室のように、体調が悪いときだけでなく、少し休みたいときにも行ける場所のイメージから、「まちのほけんしつ」という名前をつけました。
相談しなければいけない場所というよりも、ただ来て過ごしてもいい場所です。おしゃべりをしてもいいし、本を読んでもいいし、ゲームをしていてもいい。そんなふうに、安心していられる場所にしたいと思っています。
ハレルワの活動はどのように始まったのか

出典:一般社団法人ハレルワ
—ハレルワの活動は、どのように始まったのでしょうか。
間々田さん)もともと、群馬でLGBTQの当事者同士が繋がれる機会自体がほとんどありませんでした。自分自身も「同じような人がどこにいるのだろう」と思っていたのですが、なかなか出会える機会がなかったのです。
それで、SNSを通じて少しずつLGBTQ当事者の人たちと繋がり、「群馬でも交流会のような場をつくれたらいいよね」という話が出てきました。それがハレルワの活動の始まりでした。
最初は本当に小さな集まりで、公共施設の小さい部屋に集まっておしゃべりをするところからスタートしました。同じ地域で暮らしているLGBTQ当事者同士が顔を合わせて話せるだけでも、「こんなに仲間がいたんだ」と安心する人が多かったです。
—最初から今のような居場所づくりを考えていたのでしょうか。
間々田さん)いえ、最初はそこまで考えていたわけではありませんでした。まずは「安心して話せる場をつくろう」という思いで交流会を続けていたという感覚です。
活動を続ける中で、学校や職場、家庭での悩みを話してくれる人も増えてきました。「同じような思いをしている人がいると分かって安心した」と言ってくれる人も多く、こうした場の大切さを実感するようになりました。
交流会を重ねるうちに、LGBTQ当事者たちの声に後押しされる形で、居場所づくりへと活動が広がっていきました。
「まちのほけんしつ」に集まる人たち

出典:一般社団法人ハレルワ
—「まちのほけんしつ」には、どのような人たちが訪れているのでしょうか。
間々田さん)LGBTQの当事者だけが来る場所というわけではありません。LGBTQ当事者の家族や友人、支援に関心のある人が訪れることもあります。年齢層もさまざまで、学生もいれば社会人もいます。
—世代ごとに集まる場もあると伺いました。
間々田さん)はい。ハレルワでは「親の会」と「ユースの会」という場もつくっています。
親の会は、LGBTQの子どもを持つ親同士が集まり、悩みや経験を共有できる場です。子どもとの向き合い方や日常の出来事について話し合うことで、「同じ立場の人がいる」と安心する人も多いです。
一方、ユースの会は若い世代のLGBTQ当事者が集まる場です。学校生活や進路のことなど、同世代だからこそ話しやすいこともあります。おしゃべりをしたり、イベントを企画したりしながら、ゆるやかな繋がりをつくっています。
また、昼間だけでなく、、夜にご飯を持ち寄って食べる会や鍋パーティーなどの交流イベントをすることもあります。
「まちのほけんしつ」は、LGBTQの人やその家族、応援したい人達がそれぞれのペースで過ごせる場所です。誰かと話したい人もいれば、静かに過ごしたい人もいます。来た人が自分らしくいられる場所でありたいと考えています。
まとめ
今回は、一般社団法人ハレルワの代表理事・間々田久渚さんに、「まちのほけんしつ」の取り組みや、地域におけるLGBTQの居場所づくりについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。
- 群馬ではLGBTQの当事者同士が繋がれる場が少なく、SNSをきっかけに交流会が始まった
- 交流会を続ける中で「もっと気軽に立ち寄れる場所がほしい」という声が生まれ、常設の居場所「まちのほけんしつ」が開設された
- 「まちのほけんしつ」はLGBTQの当事者に限らず、この場所を必要とする人が自由に過ごせる居場所として運営されている
- 親同士が語り合う「親の会」、若いLGBTQ当事者が集まる「ユースの会」など、世代や立場に応じた繋がりの場も生まれている
後編では、「まちのほけんしつ」で大切にしている関わり方や言葉の工夫、居場所の中で生まれる利用者の変化、地域で活動を続けていくための課題について詳しくご紹介します。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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