【前編】環境構成:8つの要素と3つのポイント〜子どもの周辺環境を工夫して、育みを促す〜

子どもの周囲の環境を工夫することで、子どもの育ちや学びを促す「環境構成」。こども支援ナビでも、過去に環境構成の事例をいくつかご紹介してきました。

今回は、実際に子ども支援拠点で環境構成を計画・実施していく際の手順やポイントをまとめていきます。まず前編記事では環境を構成する8つの要素、そして環境構成を考える際の主なポイントをご紹介します。

環境構成とは

環境構成とは、子どもが過ごす環境に工夫を加えることで子どもの発達や成長に意図的に働きかけることです。人間は絶えず周囲の環境から情報を受け取っています。特に子どもたちは大人よりも視覚的な情報を頼りに動いているので、環境の影響を大いに受けます。環境構成のポイントを知ることで、環境の視点から子どもの育ちを支援するアプローチを考えてみましょう。

環境を構成する8つの要素

「環境」には様々な側面があります。ここでは8つの要素に分けて見ていきましょう。

①人

環境構成では、人も環境の一つとして捉えます。表情、話し方、服装や動き方のリズムなど、支援者の見た目や振る舞いがその場の雰囲気に影響し、環境を作ります。

②自然

自然は子どもが行った行為に多様な反応を返してくれます。例えば、子どもが一本の木を投げたり地面に叩きつけたりすれば、その木は子どもの力の強さに応じて様々な反応を示します。屋内外を問わず、自然を環境の一部として構成することで、支援者と子どもたちで一緒に発見や感動を共有することができるでしょう。


画像:PAKUTASO

③物

道具などの様々な「物」も環境を構成するものの一つです。物を選ぶ際には、子どもの興味関心を惹くものは何かを考えると良いでしょう。子どもの発達に応じたシンプルで好奇心を刺激するものが、使いやすく整理されていることが大切です。

④視覚情報

状況や目的に合わせて、視覚への刺激の量を調節することが必要です。カラフルな空間は楽しそうですが、落ち着かない印象を与えてしまい生活の場としては不適切な場合もあります。。適切な刺激の量がどの程度かを考えることで、よりよい環境をつくることができるでしょう。ができます。

⑤音

音も環境を構成する要素の1つです。継続的に音がする環境ではストレスを感じます。一方で、無音の場所では逆に落ち着かない子もいます。雨音や風音が聞こえるような適度な音の環境を整えることが重要です。

⑥空間と動線

子どもが自分で選択することで、自由に環境を作り替えられるような構成にすることも必要です。

また、人の動線も重要な要素です。子どもたちや支援者がどのように空間を活用するのかを子どもの目線でチェックをする必要があります。想定するポイントとしては、出入り口はどこなのか、どこにどのくらいの人が集まりそうか,時間帯によってそれらがどのように変化するかなどが挙げられます。


画像:pixabay

⑦時間

時間も目に見えない大切な環境の一つです。子どもたちそれぞれの発達段階が違う中で、全員を一つの時間割で活動させようとすると、その時間割が合わない子どもには無理をさせてしまう可能性があります。一人一人のペースでの活動をサポートできるように、柔軟性と融通性を持った時間や、生活リズムを意識することが必要です。

⑧空気

室温、湿度、風通しなどの空気も環境を構成する要素です。陽の光や風を感じられる空間を作ることで子どもたちがより気持ちよく過ごすことができます。

環境構成を考えるときの3つのポイント

①応答性

応答性とは、子どもがその物に対して行った動作に応じて多様な反応が返ってくることです。より多様な反応が返ってくる素材ほど、応答性が高いといえます。応答性が高いものの例は水です。水は、静かに触ると小さな音とともに水面に波紋が広がり、強く水面をたたくとバシャバシャと水がはねるなど様々な反応を示します。一方、応答性の低いものの例は電気で動くメリーゴーランドのおもちゃです。子どもがどのように働きかけても同じような反応を示すものは、応答性が低いものであると言えます。

応答性が高いものが多いと、子どもは環境の多様性を知るとともに、自分を環境に合わせてコントロールすることを学ぶことができます。環境の多様性を学ぶために、応答性の高いものを取り入れると良いでしょう。


画像:pixabay

②両義性

一つの部屋をいくつかの目的で使用しなければならない場合、遊びをした後に同じ部屋で食事をするなど、全く方向性の異なる動作を同じ環境で促すことが求められます。したがって、同じ環境でも「安全」と「挑戦」など異なった方向に機能することが求められます。

このような両義性を考える時には、その場所で何を実現したいのかという目的の優先順位をつける必要があります。一つの観点から見た時によく機能する環境も、他の場面では逆に子どもたちの発達や成長を阻害してしまうかもしれません。

例えば、ケガをしないように配慮された安全な空間の中では、子どもは自ら危険を察知して自分の身を守る工夫を学ぶことができません。また、ケンカが起きないように配慮された空間の中では子どもの情緒は安定しますが、他者を思いやる能力や相手と交渉する能力を身につけることができないかもしれません。その環境で実現したい目標が明確にされ、それに応じて環境を構成していくことが重要です。

③子どもの発達

環境が子どもの発達段階に合ったものになっているかどうかも重要なポイントです。遊びが簡単すぎていたり難しすぎていたりしないか、家具や道具が子どもの体の大きさに合ったものになっているかなどを考える必要があります。子どもの目線や体のサイズなども考慮して、環境や配置を考えていけると良いでしょう。

まとめ

今回は、環境構成についてご紹介しました。ポイントを以下にまとめます。

  • 環境に工夫を加えることで子どもの発達や成長に働きかけることができる
  • 環境構成の要素は、人、自然、物、視覚情報、音、空間と動線、時間、空気の8つ
  • 環境構成のポイントは「応答性」、「両義性」、「子どもの発達」の3つ

後編では、子どもたちの遊びの場、生活の場、養護の場をどのように構成するのか、また環境構成を実施する際の手順についてご紹介します。

【後編】環境構成:場面別の環境構成と実施手順〜子どもの周辺環境を工夫して、育みを促す〜
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※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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