発達段階ごとの子どもの発達と支援のポイント~小学生編~

子どもと向き合っていると、子どもの発達に遅れを感じることもあるのではないでしょうか。学習支援や居場所づくりの現場では、年齢に見合った発達をしていない子どもがいることも少なくないため、子どもの発達段階を理解して適切な支援をすることが大切になります。そこで今回は、発達段階の分け方と、小学生低学年/中学年/高学年の発達の特徴についてご紹介します。

発達段階の分け方

発達段階とは、子ども期を発達の特徴で分けるいくつかの段階です。

発達段階を学ぶ際には、今自分が向き合っている子どもがどこまで発達が進んでおり、年齢に対して何が遅れているのかを知るために発達段階を学ぶという姿勢が大切です。支援現場で出会う子どもの中には、生活環境や生活習慣などが理由で年齢に合った発達をしていない子どもがいる場合があります。発達段階を理解することで、そのような子どもの発達の遅れを適切に見立て、その子どもの発達に合わせた支援をしやすくなります。

具体的な発達段階の分け方を説明します。発達段階の分け方にはいくつかの考え方がありますが、ここでは1つの例をご紹介します。

妊娠期・出産期

子どもが母親の子宮で育ち、誕生するまでの期間を指します。

乳児期

子どもが生まれてから1年間のことを指します。この時期の子どもは親との信頼関係を獲得し始め、親と自分の違いを少しずつ認識していきます。

幼児期

子どもが就学するまでの期間を指します。この時期の子どもは、身体的・知的発達が見られ、自己主張や疑問を持つことが増えます。この時期は第一次反抗期が始まるとも言われます。

学童期

小学校進学から卒業するまでの期間を指します。言語能力・認識力の高まりによって、コミュニケーションの質が上がる時期です。家庭だけではなく、学校や友人関係にも適応することが求められ、その中で自分の役割を獲得していきます。一方で、いじめや不登校を経験する可能性のある時期でもあるかもしれません。また身体的には、男女の差が表れてくる時期です。

思春期

大人としてのアイデンティティを獲得し、親や大人、社会に対して葛藤を抱く時期です。第二次性徴にともなう心理・社会的発達が起きるため、他人からどう見られているかを気にし始める子どもが多くいます。また、多くの子どもが進路の決定をする時期とも重なり、自分の進路や現実に目を向けなければいけない時期でもあります。

大人への移行期

親や養育者のもとから離れ、自立した社会人になるための期間です。

学童期の子どもの発達

学童期の子どもたちは小学校に入学し、家庭外のより広い世界で新しい人と出会ったり、新しい出来事に遭遇したりします。そのため、日常生活の中で生じる困難も増えます。一方で、困難を乗り越える経験を通して、生きていくうえでの強みであるストレングスや、困難や傷つきから回復する力であるレジリエンスを身につけていく大切な時期でもあります。

ここでは、小学校低学年・中学年・高学年に分けて発達の特徴を見ていきます。

小学校低学年の子どもの発達

この時期の子どもたちは、愛情のある関わりを求めながらも、子どもの自立の大切さを理解して束縛しすぎない大人を求めています。このような関わりを一人の大人ですべてを達成することは難しいかもしれません。そのため、複数の大人が役割分担をしながら子どもに関わることが大切です。

環境の変化に適応し学校に通うことができる子どもたちは、学校生活の中でいくつかの力を育んでいきます。

  1. 協調性
    子どもたちは、他の子どもとルールを守りながら遊びを楽しんだり、学びの中で競争したりすることで、協調性を身につけていきます。
  2. 共感性
    自分よりも年少の子どものお世話をする中で年上としての役割を覚えていきます。
  3. 自分への自信
    学校では学習に積極的に取り組むことが求められたり、集団活動に参加することが求められたりします。その中で子どもは様々な力を身につけ、自分は他者の信頼に値する人間であるという自信を持つようになります。

しかし、小学校に入学すると、新しい環境で急な変化に適応することが求められるため、小学校に通うことができない子どももいます。小学校に通うことができない場合には、保健室等の校内の別室や、適応指導教室を通い先として利用できます。保護者と学校の担任の先生の間でよく相談をし、場合によっては、スクールカウンセラーや教育委員会に設置されている教育相談なども利用できます。

続いて、小学校低学年の時期に生じる課題を見ていきます。1つ目が、家庭以外の様々な大人とも安定した関係性を育むことです。兄弟げんかが他の人との争いごとへの対応の練習になるなど、家庭の様子が子どもの社会的なあり方に反映されることも多くあります。

2つ目が、学力形成のための基礎を構築することです。家庭状況が不安定だったり、他者との人間関係を上手く築けなかったりすると、子どもは学習に集中できません。そのため、子どもが学習に集中できるような環境づくりが必要になります。

こうした課題は全ての子どもに訪れるものであり、課題にぶつかった際の大人の対応が大切です。小学校低学年の子どもは徐々に言葉による賞賛や励ましを動機付けとするようになります。大人の言葉をもとに子どもは自分へのイメージを形成していくため、前向きな声かけを大切を大切にすると良いかもしれません。

小学校中学年の子どもの発達

この時期の子どもたちは、少しずつ自己を確立していき他者と自分との違いを確認するようになります。同時に、自己を確立するために親との関係を見直し、時には分離を図ることもありますが、親と離れることに対する不安や罪悪感も持ちやすい時期です。また、基本的な生活習慣において、自分のことを自分でできる時期であったり、性的同一性が明確化してくる時期でもあります。

画像:LFA作成

続いて、小学校中学年で身につける力を見ていきます。小学校中学年になると、友人関係も複雑化していくため、激しい感情を扱う練習をしたり、対人関係における矛盾や困難さに工夫して対応しようとするようになります。他にも現実的な認識をする力が育つ時期にあたるため、自分の家庭の状況を認識し、他の家庭と比較して理解することが出来るほか、時間や距離の概念、つまり歴史や地理の概念を理解できるようにもなります。

小学校中学年で課題になりやすいこととしては、親からの分離に伴う様々な感情を処理しなければならないことと、複雑な人間関係から生じるいじめが挙げられます。いじめをする側の子どもは、自分の弱さに耐えられないと感じていることが多くあります。その結果、人を傷つけたい欲求が他者への攻撃となりいじめに発展する場合があります。一方で、そうした攻撃を他者に許してしまう子どもはいじめられやすいと言えるかもしれません。

いじめに対しては、いじめの背景を理解した大人の適切な介入が大切になります。子どもの間の問題に大人が直接介入することは、子どもの自己解決能力を奪うことに繋がる場合があります。一方で、いじめている子どもの自己コントロールの回復を図ることや、いじめの対象になっている子どもの心身の保護が必要になります。

小学校高学年の子どもの発達

この時期の子どもたちは、リーダーとしての役割を自覚し、下の学年の子どもの面倒を見る認識を持つようになります。そうした役割を果たすにあたり、役割に見合う知識や体力、勇気など様々な力が求められる時期でもあります。

小学校高学年では次のような力が身につきます。

  1. 自尊心や責任感
    様々な活動に参加し、成功すれば自尊心が満たされます。一方で、失敗すれば責任を感じ、時には批判を受けなければならないときもあります。
  2. 現実を認識する力
    自分の能力を受け入れて現実的に対応することや進路を選択することが求められるため、自分の現実を認識する力が成長します。

続いて、小学校高学年で課題になりやすいことを説明します。この時期の子どもは気持ちや体調が不調になる子どもも少なくありません。精神的に未熟である一方で、活動における責任を求められるという食い違いに耐えられない場合があるためです。

また、人間関係を上手く築けず緊張が生まれることがあります。その結果、集団によるいじめ行動や同調しない友達に対するいじめが起きたり、子どもが抱える葛藤が深刻になることがあり得ます。

この時期に生じる課題については、接する大人が冷静に、客観的に事実を見るよう意識することが大切です。大人自身の小学校・中学校の経験や記憶と重ねて認識し、感情的になってしまうことがあるため、目の前の子どもに起きていることを理解する姿勢を意識しましょう。

これらに加えて、現在の日本では、小学校高学年、場合によっては中学年から、中学校受験を意識した競争の傾向が強まっていくことがあります。過度に競争的な教育をしてしまうと、子どもが耐えられないほどの強制力や不安が生じてしまいます。そうした状況に対して、国連から、マルトリートメント(心理的・社会的要因を含む不適切な関わり)であるという指摘を受けています。

まとめ

  • 発達段階とは、子ども期を発達の特徴で分けるいくつかの段階であり、一例として次の段階に分けられる
    • 妊娠期・出産期→乳児期→幼児期→学童期→思春期→大人への移行期
  • 今自分が向き合っている子どもがどこまで発達が進んでおり、年齢に対して何が遅れているのかを知るために発達段階を学ぶという姿勢が大切
  • 小学校低学年
    • 身につける力:協調性や共感性、自分への自信
    • 生じやすい課題:家庭以外の大人とも安定した関係性を育むことや、学力形成のための基礎を構築すること
  • 小学校中学年
    • 身につける力:激しい感情を扱う力や、対人関係における矛盾や困難さに工夫して対応する力
    • 生じやすい課題:親からの分離に伴う様々な感情を処理しなければならないことや、複雑な人間関係から生じるいじめ
  • 小学校高学年
    • 身につける力:自尊心や責任感、現実を認識する力
    • 生じやすい課題:活動における責任感から生じる気持ちや体調の不調や、人間関係を上手く築けないことによる緊張

参考図書:『子ども家庭福祉の世界』山野則子・武田信子,2015,有斐閣アルマ

※本記事の内容は一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

この記事は役に立ちましたか?