【連載第4回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)

こども支援ナビでは、これまでゲストをお招きして学び/知見/意見をシェアするイベント「こども支援ナビ Meetup」を開催してまいりましたが、この度新たにオンラインでの研修をスタートしました。

2025年9月17日に開催された初回では、講師に児童精神科医の山口有紗氏をお迎えし、「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」というテーマでの講義と、参加者同士のグループ対話、質疑応答を行いました。

イベントレポート第4回では、グループセッションの後に行われた参加者との質疑応答の様子をお伝えします。

連載第1回・第2回・第3回はこちら:

【連載第1回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)
【連載第1回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)
【連載第2回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)
【連載第2回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)
【連載第3回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)
【連載第3回】児童精神科医 山口有紗さんに学ぶ「トラウマインフォームドケアの視点と実践 ― 私たちが知っておきたい『安全・信頼・つながり』」(オンライン研修)

 

プロフィール:山口有紗 氏

 

児童精神科医、小児科専門医・子どものこころ専門医、公衆衛生学修士。高校中退後、イギリスでの単身生活や国際関係学部での学びを経て医師となる。現在は子どもの虐待防止センターに所属し、地域の児童相談所などで相談業務に従事。国立成育医療研究センター共同研究員、こども家庭庁アドバイザー。近著は「子どものウェルビーイングとひびきあう――権利、声、「象徴」としての子ども」(明石書店)、「きょうの診察室: 子どもたちが教えてくれたこと」(南山堂)。

トラウマを持つ子と他の子との関わりのバランス

—参加者)トラウマを持つ子が他の子どもとの関わりの中で加害者になった場合、トラウマを持つ子も大事にしてあげたいけど、他の子どもも大事にしてあげたいのでそのバランスを取るのが難しいと感じています。何かアドバイスなどありますか?

山口)子どもたちが集団生活をしていると、子どもたち同士でトラウマを刺激し合ってしまってトラブルが起こることも多々あるかなと思います。

このような場面では、トラウマを持つ子とトラブルに遭った相手の子の両方を皆さんが大切に思っていて、どちらもケアすることを子どもたちに共有することが大事かなと思いました。つまり、「目の前のあなたを大切に思っているよ」という大人のスタンスが誰にでも保障されていることを子どもたちが理解している状態を作るというのでしょうか。

その土台となるものとして、トラウマインフォームドケア、すなわちトラウマによる気持ちや行動・言動の揺らぎが誰にでも起こり得ることを、子どもたちを含めたみんなが共有して理解している状況を作れると、その先にあるそれぞれの子どもへのケアがしやすくなるのかなと思います。

子どもたちとトラウマインフォームドケアを共有するには

—参加者)子どもたちにトラウマインフォームドケアの理解を促すための具体的なアプローチについて、何かヒントをいただきたいです。

山口)児童相談所のようなトラウマを扱わざるを得ない場では、心理士さんなどがトラウマに関する話をする流れでトラウマインフォームドケアを取り上げて子どもたちに伝えています。

子どもたちの居場所のようなところでは、絵本や書籍を活用されるのも役立つかもしれません。それらを使って子どもたちとトラウマについての理解を深める機会を設けることもできます。

また、トラウマインフォームドケアについて大人が誰でも同じように伝えられるような職員研修とその後の対話も効果的ですそうすることで、トラウマについて話をする場を設けなくても、日常でそうした場面に遭遇したとき共通言語のもとで子どもたちと「こういうことがあるんだって」と対話できるかもしれません。

全体でのアプローチと個別でのアプローチを、組織の状態と子どもの発達の段階に合わせて組み合わせていくとよいかと思います。

いつもの時間・場所で過ごすルーティンを作る

—参加者)一時保護所でのヨガはどのように実施しているのか詳しく聞きたいです。

山口)毎週同じ曜日・同じ時間に同じような部屋のレイアウトで実施しています。

なぜヨガをしているかというと、生活の変化が多いなかで、同じ場所・同じ時間で同じようなことが起こるという見通しを子どもたちが持てることが大事だと思っているからです。いつもの時間にその場所に来てヨガをすることが、その子にとってのルーティンになるように場を設けています。

枠はしっかり決めて子どもたちが直感的に「ヨガがあるな」とわかるように設定していますが、内容はそのとき参加した子どもたちの雰囲気や要望によって変えています。

例えば、小学生が多いときはヨガポーズが多めの楽しい雰囲気にしたり、思春期の子どもが多いときにはリラックスしたい身体の部位に合わせてゆったりめのヨガをしたり、子どもたちに聴きながら、状況に合わせていろいろと工夫をしています。

登壇者からの挨拶

本日はありがとうございました。

皆さんの話されているブレイクアウトルームを少し回らせてもらったのですが、皆さんがいろいろと悩まれていることがよく伝わってきました。

私はこれがすごく大事なことだと思っていて、皆さんのように子どもたちと共にあったりトラウマや傷つきと共にあると、スパッと解決したり気持ちよくわかることはあまりないのではないかなと思っています。

だからこそ、私たち大人が「わかった気」にならないことはすごく大事で、わかっているけどできない、現場では難しい、と思いながらもゼロにはしないように微力ながらも努力し続けられる環境があることが本当に宝物だなと感じます。

なので、ぜひこれからも皆さんとつながっていけたら嬉しいですし、皆さんの声からもたくさん学ばせていただきたいと思っています。

まとめ

今回は、児童精神科医の山口さんに、トラウマを持つ子と他の子との関わりのバランスや、子どもたちとトラウマインフォームドケアを共有するためのヒントなどについて伺いました。ポイントを以下にまとめます。

  • トラウマを持つ子が暮らす空間の中では、「目の前のあなたを大切に思っているよ」という大人のスタンスが誰にでも保障されていることをすべての子どもたちが感じられる状態を作ることが大切。
  • 子どもたちとトラウマインフォームドケアを共有するには、絵本や書籍を使って全体に共有する機会を設けたり、職員全員が同じように伝えられる環境を整えて状況に合わせて子どもたちに個別に伝えられたりする方法がある。

※本記事の内容は専門家個人の見解であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません

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