学習支援の現場では、子ども一人一人の学習のつまずきが違うからこそ、それぞれの子どもに合わせた授業内容や教材が必要になることもあります。特に、中学校で扱う科目の中でも学習の積み重ねが必要になる英語・数学は、子どもがつまずいている範囲まで遡って学習する必要があるため、授業内容の決め方や教材の選び方を迷う方も多いのではないでしょうか。
今回は、中学生の子どもの英語・数学の授業内容や教材をどのように決めるのかについて、NPO法人Learning for All(以下、LFA)の事例を具体的に紹介します。記事の最後にはLFAで実際に使用している英語・数学のテストやカリキュラム表などのダウンロードフォームを用意していますので、教室に通うお子さんに合わせてご利用ください。
授業内容を決める流れ
LFAでは、以下の手順で子ども一人一人に合わせた授業内容や教材を決定しています。一つずつ具体的に紹介していきます。
- 「事前テスト」を子どもに解いてもらう
- 事前テストで子どもが間違えた問題を洗い出す
- 間違えた問題をもとに学習内容を決める
- 子どもに合う教材を選ぶ
①「事前テスト」を子どもに解いてもらう
LFAではまず、事前テストと呼ばれる、勉強のつまずきを特定するテストを子どもに解いてもらいます。事前テストを子どもに解いてもらうことで、子どもが何の学習内容でつまずいているのかを過去に習った内容にまで遡って把握することができます。
事前テストは中学一年生~中学三年生までのテストを用意しており、さらにそれぞれ一学期・二学期・三学期の3種類に分かれています。例えば、中学一年生の子どもが一学期時点でできるようになっておくべき内容の範囲につまずきがないか把握したいときには、中学一年生の一学期の事前テストを解いてもらいます。中学一年生の一学期の事前テストには、分数の足し算・引き算など小学校での学習範囲も一部含まれており、小学校で習った内容につまずきがないかどうかも確認することができます。
また、実際に子どもに事前テストを解いてもらう際には、大きく2つの配慮をしています。
(1)事前テストを行う目的を子どもに伝えておくこと
中学校に進学したばかりでテストに慣れていない子どもや、不登校でテストを受けることが久しぶりである子どももいるため、突然大人からテストを解くように言われると驚いてしまうかもしれません。子どもに最適な授業内容を決めるために事前テストで今の学力を測りたいということを、子どもに事前に説明するようにしています。
(2)大人が子どもに解き方を教えないこと
事前テストは子どもの現在の学力を測ることを目的としているため、大人が子どもに解き方を教えてしまうと、正確に学力を測れない場合があります。そのため、子どもに「分からないから教えてほしい」と言われた場合にも、「分からない問題は空欄にしていいよ」などの声かけをし、子ども一人の力で問題を解くように促しています。
②事前テストで子どもが間違えた問題を洗い出す
事前テストを子どもに解いてもらった後は、答案の丸付けを行い、子どもが間違えた問題を洗い出します。間違えた問題をもとに授業内容を決めるため、後から見返しやすいよう、以下の図のように間違えた問題をエクセル・スプレッドシートやノートに洗い出しておくとよいでしょう。
③間違えた問題をもとに学習内容を決める
子どもごとに間違えた問題を洗い出した後は、実際に授業で扱う内容を決めていきます。その際にLFAではカリキュラム表と呼ばれるシートを使用しています。
カリキュラム表では、事前テストの各設問について、その内容がどの学年で習得するどの単元に紐づいているか(=設問に不正解だった場合に戻り学習をすべき単元)を確認することができます。例えば、以下の図の赤枠部分では、小問番号11を間違えていた場合には該当項目以前に、小4の2学期で習得する「四則計算の順序」、中1の1学期で習得する「正負の数の加減」、中1の1学期で習得する「正負の数の乗法」を理解している必要があるということがわかります。子どもの間違え方を確認し、学習し直す必要がある項目を決定しましょう。子どもが事前テストで間違えた問題とカリキュラム表を照らし合わせながら、子ども一人一人に合った授業内容を決めていきます。
④子どもに合う教材を選ぶ
子ども一人一人の学習内容が決めた後には教材を選んでいきます。LFAではボランティア教師たちのおすすめ教材を一覧表にまとめています。何年生の学習内容を扱うかや事前テストの点数をもとに、子どもに合わせた教材を選んでいきます。
例えば、事前テストが40点の中学一年生に基礎を身につけられる易しい問題を繰り返し出したい場合には、「中1数学をひとつひとつわかりやすく」を選ぶと良いかもしれません。
まとめ
- LFAで授業内容を決める流れ
- ①「事前テスト」を子どもに解いてもらう
- ②事前テストで子どもが間違えた問題を洗い出す
- ③間違えた問題をもとに学習内容を決める
- ④子どもに合う教材を選ぶ
- 子どもに事前テストを解いてもらうときに配慮するポイント
- (1)事前テストを行う目的を子どもに伝えておくこと
- (2)大人が子どもに解き方を教えないこと
- 事前テストで間違えた問題をもとに、一人一人にあった学習内容を決める(事前テストの各設問の内容を習得する学年と、不正解の場合に戻り学習をすべき単元は、カリキュラム表で確認する)
資料ダウンロードフォーム
本記事でご紹介した、LFAで使用している事前テスト、カリキュラム表、おすすめ教材を下記フォームからダウンロードできます。参考利用としてお使いください。
事前テスト・カリキュラム表・おすすめ教材一覧ご利用時の注意事項(※必ず以下の項目を確認してからのご利用をお願いいたします)
- 本事前テスト・カリキュラム表は「市販の教材では対応が難しい学力レベルの子どもの、既習範囲のつまずきを特定すること」を目的としています。テストにはつまずきやすい、またはこの先の学習に影響がある項目を主に取り上げており、全ての既習範囲を網羅しているわけではありません。また学校の授業から大きく遅れのない子どもはこのテストの対象外となります。
- 地域・学校によって指導順や既習範囲が異なる場合がございます。本事前テストをベースに、ご自身の教室の子どもに合わせてアレンジをしてのご利用をおすすめしております。(wordファイルはご自由に編集いただいて構いません。)
- 本事前テスト・カリキュラム表・おすすめ教材一覧は子どもの学力の向上を保障するものではありません。あくまで一つの事例として、ご自身の責任の範囲でのご利用をお願いいたします。
- 事前テストとカリキュラム表・おすすめ教材一覧はセットでご活用ください。
また、スタッフ・ボランティアの方向けの説明には、以下の説明資料をダウンロード・印刷してご活用ください。
※本記事の内容は団体の一事例であり、記載内容が全ての子ども支援団体にあてはまるとは限りません
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